そんな印象的なフレーズで知られる名作童話「星の王子さま」を題材としたボードゲーム「星の王子さま ボードゲーム 日本語版」(以下,星の王子さまボードゲーム)が,2013年2月16日,ホビージャパンより発売となった。現在全国のアナログゲームショップで入手可能で,価格は2730円(税込)だ。
フランスの作家,アントワーヌ?ド?サン=テグジュペリの代表的な作品として知られる「星の王子さま」は,“小さな星の王子さま”が「ほんとうにたいせつなもの」を探して旅する物語で,世界中の読者に愛される作品である。そのエッセンスを凝縮し,ボードゲームという形で再現したのは,同じくフランスの名ゲームデザイナー?ブルーノ?カタラと,などのゲームタイトルで知られるアントワーヌ?ボゥザのタッグ。サン=テグジュペリのオリジナルアートワークを用いたタイル配置型のボードゲームで,子供から大人まで,多くの人がプレイできるタイトルに仕上がっている。
シンプルなルールは,農場系のソーシャルゲームにも似た楽しみがあり,また美しいイラストはインテリアとしても通用しそうだ。筆者もさっそく遊んでみたので,そのレビューをお届けしよう。
■原作「星の王子さま」とは
フランスの作家?サン=テグジュペリによって,1943年に出版された童話作品。児童文学でありながら,寓話的な示唆に富んだストーリーと,作者の自筆による,愛らしいアートワークで人気を博し,世界各地で高い評価を得た。
物語の語り手は,絵描きの道を諦めて,飛行士になったという「ぼく」。ある日砂漠に墜落した「ぼく」は,そこで“小さな星の王子さま”を名乗る不思議な少年と出会う。食料も水も残り少なく,途方に暮れる「ぼく」の話相手となった王子さまは,自身のこれまでの旅について語り始める。
例えば,王子さまの星は住人が王子さま一人きりであること。その星にはコンロのようなサイズの小さな活火山がふたつ,休火山がひとつ,あとは,どこからともなく飛んできた種から生えた花が一輪咲いていること。唯一の話し相手であった,その花と喧嘩したことで,星から旅立ったこと。そして幾つかの小さな星を巡った後,地球にやってきたこと。
たくさんの話を聞き,やがて王子との別れの時が訪れる。「ぼく」は奇跡的に飛行機の修理に成功し,王子さまに別れを告げる。そして「ほんとうにたいせつなもの」を見つけた王子さまは,再び自身の星へと戻っていくのであった。
原作は岩波少年文庫版(内藤 濯 訳/1953年初版)がよく知られている
ぼくの星を作ろう!
星の王子さまボードゲームは,非常にシンプルなルールの,タイル配置型ゲームである。
80枚あるタイルには,原作のアートワークを使用した小さな星のパーツが描かれており,これを縦4×横4に16枚並べ,各自が「ぼくの星」を作っていくのがゲームの基本となる。タイルには「惑星の中央」「惑星のふち(上り坂)」「惑星のふち(下り坂)」「キャラクターが写った星空」の4種類があり,各4枚ずつをゲーム中に獲得して,丸い惑星を作っていく。
星が完成したら,四隅の「星空」に配置されたキャラクターと,各タイルに描かれた絵の内容(星/動物/バラ/街灯/バオバブの木/火山)によって点数が決まる。もちろん,より高い点数を取った人が勝ちだ。後は,以下の3つのルールを覚えればいい。
その1:タイルのとりかた
タイルを「惑星の中央」「惑星のふち(上り坂)」「惑星のふち(下り坂)」「キャラクターが写った星空」の4種類に分けて山にする(プレイ人数が5名より少ない場合は,その分のタイルをあらかじめ減らしておく)。
親となるプレイヤーは,任意の一つの山から,プレイ人数分のタイルを引き,表にする。表になったタイルの中から,親が好きな1枚を獲得し,次のプレイヤーを指定する。指定されたプレイヤーがさらに1枚のタイルを取って,また次の人に順番を回す。全員が1枚ずつタイルを取ったら,最後の人が親となって,以降,これを繰り返す。
その2:バオバブの木
バオバブはアフリカに生えている大きな樹木だが,「星の王子さま」の星には少々大きすぎる。原作では,3本のバオバブの木を放置した結果,その星が破裂してしまった,というエピソードが登場する。
ボードゲーム版では,バオバブの木が描かれたタイルが3枚集まると,その3枚が一気に裏返ってしまう。裏返えったタイルには何も描かれていないため,結果として寂しい星になってしまうのだ。
バオバブの木を得点にできるキャラクター(庭師)や,裏返ったなにもないタイルを得点にできるキャラクター(「呑み助」)もいるので,一概にそうとは言えないのだが,バオバブの木は基本的にプレイヤーにとって危険なカードである。
その3:火山が多すぎるのはマイナス
最終的な得点計算の段階で,火山が描かれたタイルをたくさん持っている人は注意が必要だ。プレイヤーの中で,火山が一番多い人は,その火山の数だけ減点を受けてしまう。一番多い人が並んで複数いるなら,その全員がマイナスとなる。また,最終的に最高得点が複数いる場合,火山の少ない方が勝ちとなる。
点数計算はキャラクターとともに
タイルを並べ終わって「星」が完成したら,四隅の星空に描かれたキャラクターごとに「だいじなもの」を数える。これが得点計算である。
■キャラクター一覧
さまざまなキャラクタータイル
おとなは数字がすき!
星の王子さまボードゲームは,箱にも「対象年齢:8歳以上」とあるように,基本的には子供向けのボードゲームだ。しかし,原作の「星の王子さま」が単なる童話に留まらないように,本作にも「おとな」がプレイするに耐えうるだけの「駆け引き」が用意されている。そう,原作になぞらえていえば,「おとなは数字がすき」なのだ。無垢ではなくなってしまった「おとな」のために,本作のメカニクスについて,少し解説してみよう。
その1:得点方式を読め!
本作ではキャラクターごとに得点方式が異なるので,選んだキャラクター同士で,得点の獲得方法が矛盾しないようにするのが重要になる。
一部のキャラクターを除くと,同じキャラクターのタイルが2枚ずつあるので,同じキャラクターで揃えた場合,その効果は累積する。なので同じキャラクターで揃えられるならそのほうが良いし,FF11 RMT,それができないなら,なるべく反発しない効果のキャラクターを選ぶことを考えた方が良い。
例えば,動物の種類を数える「狩人」と,ヒツジの種類が得点になる「王子さま」は同じタイプのタイルを集めることで高得点を狙える。ただし,バオバブの木でタイルが裏返った場合は,被害が大きくなりやすいので,注意が必要だ。
早い時期にキャラクターを決めてしまうのは,ゲームの作戦を確定するのに有意義だが,4枚すべてを序盤で決めてしまうと,後半かなりハードな点数計算を強いられることになる。また適切なタイルを取り損ねた場合も,リカバリーは難しい。
できることなら,最後の4枚目は残り5枚あたりまで粘ってから,状況を見て自陣に組み入れたいところだ。
その2:ドラフトで場を制圧せよ!
まず純粋に自分の得点を伸ばすための「素直な選択(友好的ドラフト)」。自分の得点が最大化するようにタイル選び,同じ点数ならば,バオバブの木や火山などのリスクを抱えない選択をする。このスタイルには,場の緊張感がそれほど上がらない利点がある。
次に,ほかのプレイヤーにマイナスを押し付ける「攻撃的な選択(敵対的ドラフト)」。バオバブの木がすでに2枚あるプレイヤーがいたら,その人がバオバブの木を取らざるをえないよう,タイルを残す。ほかのプレイヤーとの共謀が必要になるが,有効な攻撃方法だ。
さらに最終局面では,自分の得点にはならないが,他人の有効なタイルを横取りするカット戦術も有効だ。「庭師」へのバオバブの木や,「王様」へのバラは,うまくカットできれば,7点もしくは14点の点差となって現れる。
その3:残り物にも福がある!
本作におけるドラフトは,次に手番となるプレイヤーを指定できるため,回す順番にも作戦がある。たとえばバオバブの木が2枚あるプレイヤーは,どれほど点数が高くなるタイルでも,バオバブの木があるタイルは選択できない。
また最後になったプレイヤーが次に親になるので,タイルを選ばせても点数に影響しないなら,得点トップのプレイヤーを早めに指定して,そのプレイヤーに親を回さないというのも一つの戦術だ。
その4:安定した得点源を
本作で勝利しようと思うと,必要な獲得点数の目安はおよそ40点超。つまり四隅に配置されたキャラクターの稼ぐ得点が,それぞれ10点以上になる形を目指すことになる。
「王様」「庭師」は,獲得点数が7点,14点,0点のいずれかで,14点を取るには運と技術が必要な玄人向けのキャラクター。「呑み助」は狙ってバオバブの木を取っていけば,最高18点が狙えるが,中盤から取りはじめても10点はなかなか難しいだろう。「王子さま」をはじめとした,それ以外のキャラクターは,安定して10点前後の得点を狙える。
これらを踏まえて,安定した点数源となるキャラクターと,勝負に出るキャラクターを意識的に配置していこう。軽んじられがちな「天文学者」や「点燈夫」も,意外に安定した得点源となる。
ボードゲームの事始めに最適の一作
「星の王子さまボードゲーム」は,広く万人にお勧めしたいボードゲームだ。
原作の雰囲気を残した美しいイラスト,子供でも遊べるシンプルなルール,自分の星を作るという「遊び心をくすぐる」趣向が素晴らしい。ルール説明は1分で終わるし,1回プレイすれば,すぐに要領もつかめる。初心者向けに多少丁寧に説明しながらやっても,1時間はかからない。1ゲームは通常30分ほどもあれば終わり,プレイ人数も2?5名と,融通が効きやすい。価格も2730円(税込)と手が出しやすいため,ボードゲームが初めてという人にも勧められるだろう。原作が有名なこともあって,ボードゲームの事始めには,最適な一作だ。筆者がテストプレイしたときも,ゲーマーでない妻が最初にハマってしまったくらいなので,本稿を読んだ読者も,ぜひ友達を誘ってプレイしてみてほしい。
その一方で,ベテランゲーマーでも楽しめる要素が揃っているのも見逃せない。コアなゲーマーを4人集めてプレイすると,各自のポイントを随時計算しながらのハードなドラフト戦が展開される。キャラクターやタイルのパターンを暗記してしまったら,洒落にならないほど,ハードな思考ゲームとなるのである。
筆者はこうしたプレイが好きなので,「数字の好きな大人」にも遊べるゲーム,といいたいところだが,原作にならって,くれぐれも「たいせつなこと」は見失いたくないものだ。そう言われてみれば,得点や勝敗に血眼になって,攻撃的なドラフトを繰り返すのは,確かに少々「おとなげない」かもしれない。
商品名:「星の王子さま ボードゲーム 日本語版」
日本語版販売:ホビージャパン
製造:Ludonaute
価格:2730円(税込)
ゲームデザイン:アントワーヌ?ボゥザ&ブルーノ?カタラ
アートワーク:アントワーヌ?ド?サン=テグジュペリ
プレイ人数:2?5人
対象年令:8歳以上
プレイ時間:約25分
LPP(TM) (C)A.de Saint-Exupery Estate 2013
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